しごと能力研究学会
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現在、しごとを巡る状況が大きく変わっています。しごとの内容だけではなく、しごとが人間の生活に占める位置づけや、しごとを通して個人と社会がどのように関わるかという枠組みが変化してきています。わが国でも、この変化は大きな社会変動の動きとして現れています。この動きに対応してリストラによる失業の増大、ニートの増加などの病理的現象が出現しています。さらに、少子高齢化などの社会変化がこれを増幅し、制度の根本的な見直しが必要となっています。
この変化は、現在の日本で現れているばかりではなく、世界的な拡がりを持っており、各国の研究者も様々に研究を進めています。アメリカでは新しいキャリア開発論が盛んであって、Academy of Management Executive誌がキャリア特集を組み、E.H.Shein、D.T.Hallなどが興味深い論文を寄せていて、21世紀のキャリアのあり方を論じるなどの展開をみています。 この変化は、コミュニケーション技術や制御技術の発達に伴う社会的適応過程が基層にあると考えられますが、それぞれの社会で異なる現象が生じていて、それぞれ異なる対応が要請されているといえます。
この変化に対して、理解を深めるばかりではなく、それへの対処をも考えていくことがこの学会を創設しようとする目的ですが、対応の主体は大学だけではなく、行政や産業界もそれぞれに対応が迫られています。実際、大学では教育再生、専門職大学院の設置、高等教育改革が行われています。産業界では、企業内での人材育成施策が大きく変化して、終身雇用制の見直し、成果主義の導入などの現象が現れ、裁量労働制の導入や派遣社員の増加などが対応策として採用されています。行政は、これらのさまざまなしごとの需要と供給をマッチングさせるメカニズムを開発する必要に迫られています。さらに、競争力を維持できるだけの人材確保は必須であり、制度設計の必要は緊急になっています。
また、NPOのしごとや、高齢者、主婦、障がい者、若年無業者のしごとなどへの目配りも要請されています。このようなさまざまな要素を取り込んで、しごとの能力に関する研究を行う必要が生じている状況に対応して、しごと能力研究学会の設立提案をさせていただきます。経営学・経済学・社会学・心理学・組織理論・教育学・法学などの関連領域の研究者や実務家に加え、しごとの哲学やしごとの人類学などに関する領域の研究者や実務家、民間組織ならびに公的機関などにおいて、職業教育、職業訓練、キャリア開発などを担当しておられる方々、企業の人事・労務に携わっておられる方々、その他しごと能力に関心をお持ちの方々にも広く参画していただき、総合的なアプローチによって研究を進め、さらに、産・官・学の連携を可能とする学会にしていきたいと思っております。